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NEW「キャンセル料に消費税はかかりますか」——かからないもの、かかるもの、請求書の書き方

予約の取り消しで受け取るキャンセル料には、原則として消費税がかかりません。ただし、時期にかかわらず一律で受け取る「手数料」や、すでに行った作業の代金として受け取るお金には、消費税がかかります。

先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。

「竹澤さん、研修の仕事が直前にキャンセルになって、規約どおりキャンセル料をいただくことになったんです。請求書には、いつもどおり消費税10%を乗せて出そうと思っているんですけど、それでいいですよね?」

この社長は、企業向けの研修やセミナーを一人で請け負っている会社の経営者です。規約では「開催7日前以降のキャンセルは、料金の50%」と決めていて、今回はそれに当たるケースでした。消費税は原則課税で申告しています。

答えを先にお伝えすると、こうなります。

「開催の何日前か」で割合が変わるキャンセル料は、失った利益を補ってもらうお金なので、消費税はかかりません。消費税を乗せて請求すると、相手はその分を差し引けず、こちらは納めなくてよい消費税を納めることになります。一方、準備で実際に行った作業の代金として請求するなら、消費税がかかります。

順を追って説明します。

 

■ キャンセル料には2つの性格があります

消費税は、商品やサービスを提供した「対価」にかかる税金です。キャンセル料と呼ばれるお金には、性格の違う2つのものが混ざっています。

・失った利益を補うもの:本来得られたはずの売上が入らなくなった分の補償。サービスの対価ではないので、消費税はかからない(不課税)
・手続きの手数料:取り消しの事務を行うことへの対価。サービスの対価なので、消費税がかかる(課税)

見分ける目安は、金額の決まり方です。「3日前なら30%、前日なら50%、当日なら100%」のように、時期によって割合が変わるものは、失った利益を補うものです。反対に、いつ取り消しても「一律1,000円」のように決まっているものは、手数料と考えます。

航空券がわかりやすい例です。時期によって金額が変わる「取消手数料」には消費税がかからず、一律数百円の「払戻手数料」には消費税がかかります。

なお、両方を分けずに「キャンセル料」として一括で受け取る場合は、全体を消費税がかからないものとして扱います。

 

■ 冒頭の例で計算すると

研修料が税抜20万円(税込22万円)で、規約の50%のキャンセル料を受け取る場合です。キャンセル料は時期で割合が変わるので、消費税はかかりません。

200,000円 × 50% = 100,000円(不課税)

受け取る側の仕訳
借方:売掛金 100,000円 貸方:雑収入 100,000円(対象外)

払う側の仕訳
借方:支払手数料 100,000円(対象外) 貸方:未払金 100,000円

これを「10万円+消費税1万円」で請求すると、受け取る側は本来かからない1万円を消費税として申告し、払う側は控除できない1万円を控除した形になってしまいます。どちらにとっても、あとで修正が必要になる処理です。

「え、いつも消費税を乗せていました」と社長は驚いていましたが、請求する側が迷うことは珍しくありません。規約で「料金の50%」と決めている以上、そこに消費税を上乗せする根拠はない、ということです。

 

■ 作業の代金として請求するなら、消費税がかかる

一方で、キャンセルの時点までに、資料の作成や会場の手配など、実際に作業をしていることもあります。この作業分を「キャンセル料」ではなく「すでに行った作業の代金」として請求するなら、それはサービスの対価なので消費税がかかります。

この場合は、インボイスの記載事項を満たした請求書で、消費税を明記して請求します。払う側はインボイスがあれば、その消費税を差し引けます。

相手が「税込みでこの金額」のつもりで払うなら、不課税で請求されると、相手は消費税を差し引けない分だけ損をします。取引先との関係を考えると、作業の実態があるものは作業の代金として課税で請求したほうが、相手にとっても親切なことがあります。どちらの性格で請求するかは、あとから都合よく決めるのではなく、規約や見積書に書いておくことが大切です。

 

■ 規約と請求書に書いておくこと

・キャンセル料:「開催7日前以降は料金の50%」など、時期と割合を書く。消費税は加算しない
・事務手数料:取る場合は、一律の金額と「消費税込み」かどうかを書く
・準備作業の代金:キャンセル時点までに行った作業を請求する場合は、その旨を書く

請求書でも、不課税のキャンセル料と、課税の手数料・作業代金を別の行に分けて書きます。分けておけば、受け取った側も迷わず処理できます。

 

■ 払う側・受け取る側で気をつけたいこと

キャンセル料を払う側になったときも、考え方は同じです。ホテルや会場のキャンセル料を会計ソフトに「課税」で入れていないか、一度確認してみてください。

また、個人の講師やデザイナーなどにキャンセル料を払う場合は、消費税がかからなくても、源泉所得税の対象になることがあります。報酬や料金の性質を持つお金は、名目にかかわらず源泉徴収の対象になるからです。源泉所得税の考え方は、以前書いた「請求は33,000円なのに、入金は29,937円でした」の記事も参考にしてください。

 

■ まとめ

・時期によって割合が変わるキャンセル料は、失った利益の補償なので消費税はかからない
・時期にかかわらず一律の手数料は、手続きの対価なので消費税がかかる
・両方を分けずに一括で受け取るなら、全体を消費税がかからないものとして扱う
・消費税がかからないキャンセル料に、消費税を上乗せして請求しない
・すでに行った作業の代金として請求するなら、消費税がかかる。インボイスで請求する
・どの性格で請求するかは、規約や見積書に先に書いておく
・個人に払うキャンセル料は、源泉徴収が必要になることがある

 

キャンセルは、受ける側にとっても、する側にとっても気まずいものです。だからこそ、請求するお金の性格と金額を先に決めておくと、いざというときに迷わず、相手とももめずに済みます。

規約を見直すなら、キャンセル料の条文と一緒に、消費税の扱いも一行書き足しておくのがおすすめです。

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自己紹介

竹澤 直樹

竹澤 直樹

運営者プロフィール

税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任

高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録

趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。

ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ

著書

「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)

運営会社

会社名
合同会社 ライズアビリティ
代表者名
代表社員 竹澤直樹
住所
埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
法人設立年月日
令和1年6月4日
資本金
100万円