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NEW「自宅の家賃、会社で払えませんか」——役員社宅にするときの自己負担と、社長の持ち家を貸すときの注意

一人社長が住んでいる賃貸住宅は、会社名義で借り直して「役員社宅」にすれば、家賃の大部分を会社の経費にできます。条件は、社長から国税庁の計算式どおりの家賃を毎月受け取ることです。

先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。

「竹澤さん、いま住んでいるマンションの家賃が月15万円なんです。これを会社で払ってもらうことはできませんか。住宅手当として役員報酬に上乗せしたほうがいいんでしょうか」

この社長は一人で会社を経営していて、自分の名義で借りたマンションに住んでいます。仕事はほとんど外のオフィスでしているので、自宅を事務所として按分する余地はあまりありません。家賃は毎月、役員報酬の手取りから払っていました。

答えを先にお伝えすると、こうなります。

住宅手当として報酬に上乗せすると、その分にも所得税や社会保険料がかかります。会社名義で借り直して社宅にし、社長から一定の家賃を受け取る形にすれば、残りは会社の経費になり、社長にも課税されません。この例なら、社長の負担は月2万円ほどで済む計算です。

順を追って説明します。

 

■ 社宅にするための3つの条件

・会社が借りる:賃貸借契約の名義を会社にする。社長個人の契約のまま会社が家賃を払うのは、社宅ではなく給与の扱いになる
・社長から家賃を受け取る:国税庁の計算式で出した「賃貸料相当額」以上を、毎月受け取る
・規程を作る:一人社長の会社でも、社宅の規程と自己負担の決め方を書面にしておく

住宅手当のように現金で渡す方法は、社宅にはなりません。いま個人名義で借りている場合は、大家さんや管理会社に相談して、会社名義の契約に切り替えます。

 

■ 社長の自己負担はいくらか

社長から受け取る家賃(賃貸料相当額)は、住宅の広さで計算方法が変わります。鉄筋コンクリート造のマンションなら床面積99㎡以下、木造なら132㎡以下が「小規模な住宅」で、次の3つの合計になります(月額)。

・建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
・12円 × 床面積(㎡)÷ 3.3㎡
・敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

冒頭の社長のマンションが60㎡で、固定資産税の課税標準額が建物600万円、敷地(持分)400万円だったとします。

6,000,000円 × 0.2% = 12,000円
12円 × 60㎡ ÷ 3.3㎡ = 218円
4,000,000円 × 0.22% = 8,800円
合計 21,018円

家賃15万円のうち、社長が負担するのは約2万1,000円です。残りの約12万9,000円、年間でおよそ155万円が会社の経費になり、社長個人には給与として課税されません。「え、2万円でいいんですか」と社長は驚いていましたが、国税庁が示している計算式どおりの金額です。

なお、床面積がこれより広い住宅は、会社が払う家賃の50%などを基準に計算します。床面積が240㎡を超えるような、いわゆる豪華社宅は、世間の相場どおりの家賃を受け取る必要があります。

 

■ 固定資産税の数字をどう手に入れるか

実務でつまずくのがここです。借りている物件の固定資産税の課税標準額は、借りる側の手元にはありません。

まずは大家さんや管理会社に問い合わせます。教えてもらえない場合でも、借りている人は、賃貸借契約書などを持っていけば、市区町村の窓口でその家屋の評価証明書を取れることがあります。どうしても数字がわからない場合は、計算式より多めの自己負担を受け取っておけば、給与課税の心配はありません。その分、会社の経費は少なくなります。

 

■ 仕訳と、毎月の処理

会社が大家さんに家賃を払ったとき
借方:地代家賃 150,000円(非課税) 貸方:普通預金 150,000円

社長の自己負担は、毎月の役員報酬から天引きし、雑収入(または地代家賃のマイナス)として計上します。住宅の貸付なので、自己負担分も消費税は非課税です。

社会保険料の計算では、住宅の現物給与の価額が都道府県ごとに決められています。自己負担がそれより少ない場合、差額が報酬として扱われることがあるので、あわせて確認してください。

 

■ 社長の持ち家を会社が借りるとき

社長が個人で持っている家やマンションを会社が借り、社員の社宅などに使うケースもあります。このときは、次の点に注意します。

・社長と会社の取引になるので、会社法の「利益相反取引」として、株主総会(取締役会がある会社は取締役会)の承認をとり、議事録を残す
・家賃は相場並みにする。相場より高いと、社長への利益の移し替えと見られる
・社長は受け取った家賃を、不動産所得として確定申告する
・会社が社員に貸す場合、水道光熱費を家賃に含めて一括で決めれば、全体が住宅の貸付として消費税は非課税になる

承認の手続きは会社の形によって変わるので、詳しくは司法書士や弁護士にも確認してください。

 

■ やってはいけないこと

・社長個人の契約のまま、家賃を会社の口座から払う
・自己負担を受け取らない、または計算式より少ない額しか受け取らない
・社宅への引っ越し代を、当然のように会社の経費にする(自宅の住み替えにかかる費用は、原則として社長個人の負担と考えるのが無難です)

個人事業主の方は、自分に社宅を貸すことはできません。自宅を仕事にも使っているなら、按分で経費にする方法になります。考え方は自宅兼事務所の家賃は経費にできる?按分の正しいやり方で書きました。

 

■ まとめ

・住宅手当で報酬に上乗せすると、その分にも所得税・社会保険料がかかる
・会社名義で借り、社長から賃貸料相当額を受け取れば、残りは会社の経費
・小規模な住宅の自己負担は、固定資産税の課税標準額と床面積から計算する
・この例では家賃15万円に対し、社長の負担は月約2万1,000円
・評価額は大家さんに聞くか、市区町村で証明書を取る
・社長の持ち家を会社が借りるなら、利益相反取引の承認と議事録を残す
・個人名義の契約のまま会社が払う、自己負担を受け取らない、は避ける

 

役員社宅は、一人社長が使える仕組みの中でも効果の大きいものです。その分、契約の名義や自己負担の計算など、形を整えないと認められません。

期のはじめや、契約の更新のタイミングは、切り替えのよい機会です。更新の案内が届いたら、会社名義に変えられないか一度検討してみてください。

レンタルオフィス・プラスエスは、税理士が運営しているレンタルオフィスです。メールでの経営相談は回数無制限。「うちの物件だと自己負担はいくらになるか」「社宅規程をどう書けばいいか」といったご相談にも、実際の数字でお答えしています。

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自己紹介

竹澤 直樹

竹澤 直樹

運営者プロフィール

税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任

高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録

趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。

ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ

著書

「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)

運営会社

会社名
合同会社 ライズアビリティ
代表者名
代表社員 竹澤直樹
住所
埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
法人設立年月日
令和1年6月4日
資本金
100万円