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- 「出張の日当、自分に払ってもいいんですか」——規程が1枚あるかどうかで、給与にも非課税にもなる
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一人社長が自分に払う出張日当は、旅費規程を作っておけば、会社の経費になり、受け取った社長にも所得税・住民税・社会保険料がかかりません。規程がなければ、同じお金が「役員賞与」の扱いになります。
先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。
「竹澤さん、地方のお客さんのところに月2回くらい泊まりで行っているんです。出張手当って、社長の自分に払ってもいいんですか。なんだか自分で自分にお小遣いを出すみたいで、気が引けるんですけど」
この社長は一人で会社を経営していて、取引先の多くが県外にあります。交通費とホテル代は会社のカードで払っていますが、出張中の食事や移動の細かい出費は、自分の財布から出していました。
答えを先にお伝えすると、こうなります。
社長自身に払っても大丈夫です。ただし条件が2つあります。先に「出張旅費規程」を作ること、そして金額を世間の相場から外れない範囲にすることです。この2つがそろえば、日当は会社の経費になり、社長個人には税金も社会保険料もかかりません。
順を追って説明します。
■ 日当が「非課税」になる理由
出張中は、普段より食事代がかさんだり、細かい移動費が出たりします。会社がこうした出費を補うために払うお金のうち、「その旅行に通常必要と認められる」金額は、受け取った人の所得税が非課税になります。給与ではなく、仕事の実費を補うお金と考えられているからです。
会社にとっては旅費交通費として経費になります。社会保険料の計算にも入りません。一人社長の会社でも、社長は「会社の役員」として出張しているので、この扱いは同じです。
一方、個人事業主が自分に日当を払うことはできません。個人事業では、事業主本人への支払いはそもそも経費にならないからです。これは法人ならではの仕組みです。
■ 規程がないと、どうなるか
「気が引ける」と話していた社長に、まず伝えたのがここです。規程を作らずに、出張のたびに気分で日当を払うと、そのお金は旅費ではなく給与の扱いになります。
役員の場合、毎月同じ額ではない給与は「役員賞与」です。事前に税務署へ届け出ていない役員賞与は、会社の経費になりません。そのうえ社長個人には所得税がかかり、会社は源泉徴収をする必要があります。経費にもならず、税金もかかる、という一番損な形になってしまいます。
■ いくら違うのか
月2回、1泊2日の出張をする社長が、宿泊出張の日当を1日5,000円と規程で決めた場合で計算してみます。
5,000円 × 2日 × 月2回 × 12か月 = 年24万円
この24万円は、会社の経費になり、社長は非課税で受け取れます。同じ24万円を役員報酬として上乗せした場合と比べると、役員報酬が月50万円程度の社長なら、所得税・住民税・社会保険料(本人負担分)で、おおむね7〜9万円が引かれる計算です。会社が負担する社会保険料もかかりません。数字は前提によって変わる概算ですが、差は小さくありません。
さらに、原則課税で消費税を申告している会社なら、国内出張の日当は消費税の控除の対象にもなります。
240,000円 × 10/110 = 21,818円
日当を受け取る社長はインボイスを発行できませんが、「出張旅費等特例」という扱いで、帳簿に必要なことを書いておけば控除できます。
■ 金額は「相場」から外れないように
日当に「1日○円まで」という法律上の上限はありません。判断の目安になるのは、次の2点です。
・役員と従業員を通じて、バランスのとれた基準で決まっているか
・同じ業種・同じ規模の会社が一般的に払っている額と比べて、高すぎないか
役員の日当は、日帰りで数千円、宿泊で5,000円前後に設定している会社が多い印象です。1日3万円のような金額にすると、通常必要な範囲を超えた部分は給与とみなされるおそれがあります。
■ 規程に書くことと、残しておくもの
出張旅費規程は、A4で1〜2枚のもので十分です。
・対象者:役員と従業員(将来雇う人も含めて全員)
・出張の定義:「片道100km以上の移動」「宿泊を伴うもの」など
・日当の額:日帰り・宿泊別、役職別
・交通費と宿泊費の精算方法:実費か定額か
・施行日
作った規程は株主総会などで承認し、議事録を残します。規程の効力は施行日から先の出張に及ぶもので、過去の出張にさかのぼって払うことはできません。期のはじめに作っておくと、1年間の出張すべてに使えます。
そして出張のたびに、日付・行き先・用件を書いた簡単な出張報告を残してください。規程があっても、実際に出張した記録がなければ、税務調査で日当を認めてもらえません。
■ よくある失敗
規程を作った会社でも、運用でつまずくことがあります。
・近所の外回りにも日当を払う:規程で決めた「出張」の定義に当たらない移動には払えません
・日当と実費の二重取り:出張中の食事代を会社のカードで払いながら、同じ日の日当も満額受け取ると、日当の「実費を補う」という性格が説明しにくくなります
・役員だけ高く、従業員には払わない:社内のバランスを欠くと、役員分が給与とみなされやすくなります
・海外出張も国内と同じ区分で入れる:海外での支出にあたる日当は、消費税の控除の対象になりません
どれも、規程と実際の払い方がずれたところで起きる失敗です。規程は作って終わりではなく、そのとおりに運用してはじめて効果が出ます。
■ まとめ
・出張日当は、通常必要な範囲なら受け取る人は非課税、会社は経費
・一人社長が自分に払うこともできる。個人事業主本人は不可
・規程なしで払うと役員賞与の扱いになり、経費にならず課税される
・年24万円の日当なら、報酬で受け取るより7〜9万円ほど手元に残る(概算)
・国内出張の日当は、帳簿の記載だけで消費税の控除も受けられる
・金額は社内のバランスと同業他社の水準で判断される
・規程は期のはじめに作り、議事録で承認する。さかのぼりは不可
・出張のたびに、日付・行き先・用件の記録を残す
「自分で自分に払うのは気が引ける」という感覚は、とても健全だと思います。だからこそ、ルールを先に決めて、そのとおりに払う形にしておくことが大切です。規程と記録がそろっていれば、税務調査でも堂々と説明できます。
経費にできるものとできないものの線引きは、経費にできる・できないの境界線。税務調査で見られるポイントでも書きました。あわせてご覧ください。
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自己紹介
竹澤 直樹
運営者プロフィール
税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任
高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録
趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。
著書
「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)
運営会社
- 会社名
- 合同会社 ライズアビリティ
- 代表者名
- 代表社員 竹澤直樹
- 住所
- 埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
- 法人設立年月日
- 令和1年6月4日
- 資本金
- 100万円