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NEW「法人にしたのに、まだ個人のカードで仕入れていませんか」——融資の審査で引っかかる理由

法人にしたあとも個人名義のカードで仕入れを続けていると、帳簿が正しくても、融資の審査で「個人と会社のお金が分かれていない」と判断されることがあります。見られているのは帳簿の中身だけではなく、お金の流れの名義です。

先日、顧問先の社長からこんな相談をいただきました。

「竹澤さん、保証協会付きの融資を申し込んだら、通らなかったんです。理由は『個人と法人の区別ができていない』って。たしかに仕入れは、個人事業のころから使っているカードで払っています。でも会社の仕入れにしか使っていないし、帳簿もちゃんとつけているんですよ」

この社長は、個人事業から法人成りして2期目です。仕入れの多い商売で、売上が伸びるにつれて在庫を持つための運転資金が必要になりました。個人事業のころから使っていたクレジットカードの利用枠が大きく、支払いのサイクルにも慣れていたので、法人にしてからもそのまま仕入れに使っていました。

答えを先にお伝えすると、こうなります。

帳簿が正しくても、審査する側から見れば「会社の仕入れを、社長個人の名義で払っている」状態です。まず法人名義のカードや口座に支払いを切り替え、それまでの分は立替精算のルールで整理する。切り替えた実績を示せるようにしてから、相談し直すのが近道です。

順を追って説明します。

 

■ なぜ「帳簿が正しい」だけでは足りないのか

融資の審査では、会社に返済する力があるかを見ます。そのとき前提になるのが、「会社のお金」と「社長個人のお金」がはっきり分かれていることです。

個人名義のカードで仕入れていると、支払いは社長の個人口座から引き落とされます。審査する側からは、会社の仕入れのお金がいったん社長個人を通っているように見えます。帳簿の上で正しく処理されていても、それを確かめるには、社長個人のカード明細や通帳まで見なければなりません。

「全部会社の分なんですけどね」と社長は納得がいかない様子でしたが、金融機関や保証協会は、外から見てわかる形になっているかを重視します。個人的な利用が一切なくても、名義が個人である以上、「区別ができていない」と受け取られるわけです。

 

■ まず、支払いの名義を会社に切り替える

やることは、支払いの入口を会社名義にそろえることです。

・法人名義のクレジットカードを作る。設立から間もない会社でも、代表者の信用をもとに発行されるタイプのカードがあります
・仕入先への支払いを、法人口座からの振込か法人カードに切り替える
・ネットの仕入先やサブスクリプションなど、登録しているカードを一つずつ変更する
・個人のカードの引き落とし口座に、会社の口座を指定しない

最後の点は意外と見落とされます。「会社の口座から、社長個人のカード代が落ちている」状態は、個人カードで払うよりもさらに区別がつきにくく見えます。

 

■ 切り替えるまでの分は、立替精算で整理する

カードの切り替えには時間がかかります。その間にどうしても個人のカードで払った分は、「社長が会社の代わりに立て替えた」形で処理します。

たとえば、社長の個人カードで11万円(税込)を仕入れた場合です。

仕入れたとき
借方:仕入 100,000円/仮払消費税 10,000円 貸方:役員借入金 110,000円

会社から社長に精算したとき
借方:役員借入金 110,000円 貸方:普通預金 110,000円

ポイントは、月に1回など決まったタイミングで、カードの明細と領収書を付けた精算書をつくり、会社の口座から社長の口座へ振り込むことです。精算の記録がそろっていれば、「会社の支払いを一時的に社長が立て替え、きちんと精算している」と説明できます。

精算をしないまま放っておくと、役員借入金が膨らみ続けます。決算書の上でも、社長と会社の間でお金が行き来している会社に見えてしまいます。

 

■ 切り替えた「実績」をつくってから相談する

支払いを切り替えても、すぐに審査の結果が変わるとは限りません。金融機関は、試算表や通帳で実際のお金の流れを確認するからです。

・いつから法人カード・法人口座に切り替えたか
・切り替え前の個人カード払いは、いくらで、どう精算したか
・切り替え後の数か月分、会社の通帳で仕入れの支払いが確認できるか

この3点を説明できるようにしておくと、相談し直すときの材料になります。試算表の月次推移とあわせて見せられれば、なお説得力が増します。

断られた理由が「区別ができていない」という一点なら、そこを直せば道は開けます。赤字かどうかより、数字と実態を説明できるかが問われる点は、以前書いた「赤字だと融資は無理ですよね」——公庫に相談する前に知っておくことと同じです。

 

■ これから法人成りする方へ——最初に切り替えたいもの

これから法人成りを考えている方は、設立の時点で次のものを会社名義に切り替えておくと、あとで困りません。

・銀行口座:売上の入金先を法人口座に変え、取引先にも案内する
・クレジットカード:仕入れや経費の支払い用に法人カードを用意する
・仕入先・取引先との契約:契約者の名義を会社に変える
・通信費やサブスクリプション:請求先と支払いカードを会社に変える

個人事業のころの口座やカードは、切り替えが終わったら、会社の支払いには使わないと決めてしまうのが一番です。法人成りの判断そのものについては、「そろそろ法人化ですか」と聞かれたら——判断の分かれ目は3つで書きました。

 

■ まとめ

・法人成り後も個人カードで仕入れると、融資の審査で公私の区別を疑われる
・帳簿が正しくても、支払いの名義が個人なら「区別できていない」と見られる
・法人カード・法人口座に支払いを切り替え、登録カードも一つずつ変える
・個人カードの引き落としに会社の口座を使わない
・切り替えまでの分は、立替精算(役員借入金)で月1回整理する
・切り替えの時期と精算の記録を説明できるようにしてから相談し直す
・問われるのは赤字かどうかより、実態を説明できるかどうか
・これから法人成りするなら、口座・カード・契約の名義を設立時に切り替える

 

法人成りの直後は、登記や税務署への届出など、やることが多くて手が回りません。使い慣れた個人のカードをそのまま使い続けるのは、ごく自然なことです。ただ、融資が必要になるのは、たいてい売上が伸びて資金が足りなくなったときです。そのときに慌てないよう、会社の支払いは会社の名義で、という形を早めにつくっておくのがおすすめです。

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自己紹介

竹澤 直樹

竹澤 直樹

運営者プロフィール

税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任

高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録

趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。

ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ

著書

「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)

運営会社

会社名
合同会社 ライズアビリティ
代表者名
代表社員 竹澤直樹
住所
埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
法人設立年月日
令和1年6月4日
資本金
100万円