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NEW「売上は増えているのに、消費税の納付が重すぎる」——粗利の薄い商売ほど消費税が効く理由

消費税は「利益」ではなく「粗利」にかかる税金に近いため、粗利の薄い商売ほど、利益に対する消費税の重さが大きくなります。赤字の年でも納付がなくなるわけではありません。

先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。

「売上は去年より増えているんです。でも利益は年30万円くらいしか残っていないのに、消費税の納付が24万円と言われて。何かの間違いじゃないですか」

仕入れた商品を売る商売で、売上は年2,400万円(税抜)ほど。仕入や販売手数料などを差し引いた粗利は、売上の1割程度です。会社を作って数年がたち、消費税の課税事業者になりました。粗利の薄い商売では、同じ相談を複数の方からいただきます。

答えを先にお伝えすると、こうなります。

間違いではありません。消費税の納付額は、おおむね「粗利×10%」で決まります。役員報酬や社会保険料のように消費税のかからない経費は差し引けないので、粗利が薄く、人件費の割合が大きい会社ほど、利益の大部分が消費税で消えるように見えます。

順を追って説明します。

 

■ 消費税は「預かった分」から「払った分」を引いて納める

原則的な計算(一般課税)では、売上で預かった消費税から、仕入や経費で払った消費税を差し引き、残りを納めます。冒頭の会社の数字で計算してみます(概算です。地方消費税を含めて10%で計算しています)。

・売上(税抜)2,400万円 × 10% = 預かった消費税 240万円
・仕入・手数料など(税抜)2,160万円 × 10% = 払った消費税 216万円
・納める消費税 = 240万円 − 216万円 = 24万円

売上2,400万円から仕入など2,160万円を引いた粗利は240万円です。そして納付額の24万円は、ちょうど「粗利240万円 × 10%」になっています。消費税のかかる仕入や経費しかない場合、納付額は粗利の10%に近づきます。

 

■ なぜ利益の8割になってしまうのか

問題は、粗利から差し引く経費の中身です。この会社の粗利240万円から、次の経費を払っています。

・役員報酬 月15万円 × 12か月 = 180万円
・社会保険料(会社負担分) 約30万円
・営業利益 240万円 − 180万円 − 30万円 = 30万円

役員報酬(給与)と社会保険料には、消費税がかかっていません。つまり、消費税の計算では差し引けない経費です。消費税は、社長の給料を払う前の粗利240万円を基準に計算されます。そのため、利益30万円に対して消費税24万円という、利益の8割にあたる納付が生まれます。

「利益の8割も持っていかれるんですか」と驚かれましたが、正確には「利益にかかっている」のではなく「社長の給料を含めた粗利にかかっている」のです。消費税は、売上から仕入を引いた「その会社が生み出した価値」に対する税金だと考えると、この仕組みが理解しやすくなります。

 

■ 消費税をさらに重くする3つの要因

次の支払いが多い会社は、粗利×10%よりも納付が増えます。払った消費税として差し引ける金額が小さくなるからです。

・免税事業者からの仕入や外注:インボイスのない仕入は、2026年10月以降は払った消費税相当額の70%しか差し引けません。たとえば免税事業者に年500万円(税込)を払うと、500万円 × 10/110 × 30% = 約13.6万円が差し引けなくなります
・消費税のかからない支払い:給与、社会保険料、保険料、利息、土地の賃料などです
・個人から買い取る商品:中古品を消費者から買い取る場合は、帳簿などの要件を満たさないと差し引けません

免税事業者からの仕入の控除割合は、以前、「免税の外注さんへの支払い、10月から何が変わるんですか」という記事で詳しく書きました。

 

■ 「簡易課税」や「特例」が得とは限らない

消費税の計算には、売上の消費税に業種ごとの割合(みなし仕入率)を掛けて計算する「簡易課税」もあります。計算が楽なので選ぶ方が多いのですが、粗利の薄い商売では損になることがあります。

・一般課税 240万円 − 216万円 = 24万円
・簡易課税(小売業・みなし仕入率80%) 240万円 × (1 − 80%) = 48万円

簡易課税は「粗利率20%の小売業」を想定した計算なので、実際の粗利率が10%なら、一般課税の倍の納付になります。個人事業主向けの「3割特例」(2027年・2028年分。売上の消費税の30%を納める。前々年の売上1,000万円以下などの要件あり)も、同じ構造です。仮に同じ数字で使えたとしても、240万円 × 30% = 72万円になります。粗利率が低い商売では、一般課税のほうが有利になることが多いと考えてください。

なお、簡易課税は一度選ぶと原則2年間はやめられません。選択届出書を出す前に、一般課税と比べた試算を必ずしてください。

 

■ 納付で慌てないための3つの準備

・売上が入るたびに積み立てる:粗利の10%を目安に、別口座へ移しておきます。この会社なら月2万円です
・中間納付の時期を確認する:前年の消費税額(国税分)が48万円を超えると、年の途中で中間納付が発生します
・試算表で消費税の見込み額を毎月見る:税抜経理にすると、損益計算書には消費税の負担が表示されません。消費税は別枠で管理してください

 

■ 税込経理と税抜経理で、見え方が変わる

同じ取引でも、帳簿のつけ方で消費税の見え方が変わります。税込経理では、売上も仕入も税込の金額で記帳し、納めた消費税は「租税公課」という経費になります。冒頭の会社なら、税込で見た利益は54万円で、そこから消費税24万円を経費として差し引き、最終的な利益が30万円になります。

税抜経理では、最初から消費税を売上と仕入から切り離して記帳するので、損益計算書の利益は30万円のままで、消費税24万円は表に出てきません。どちらの方法でも最終的な利益は同じですが、税抜経理だと「利益は出ているのに、お金がない」と感じやすくなります。消費税の納付額は、試算表の「仮受消費税」と「仮払消費税」の差額で、毎月確認できます。

 

■ 値段を税込で決めるときの注意

小売や飲食のように、値札を税込で決める商売では、税込の値段の11分の1が預かった消費税です。1個あたりで考えると、構造がよくわかります。

・仕入 税込880円(税抜800円+消費税80円)
・販売 税込990円(税抜900円+消費税90円)
・手元に残る差額 990円 − 880円 = 110円
・納める消費税 90円 − 80円 = 10円
・本当の粗利 110円 − 10円 = 100円

税込の差額110円をそのまま「もうけ」と考えていると、10円ずつ足りなくなります。値上げを考えるときも、「税込で100円上げると、自分の取り分は約91円増える」と考えてください。

なお、2割特例を使っていた法人は、2026年9月30日を含む課税期間で特例が終わりました。粗利の薄い会社では、2割特例(売上の消費税の20%を納める)より一般課税のほうが納付が少ないこともあります。冒頭の会社なら、2割特例では240万円 × 20% = 48万円でした。特例が終わって納付が増える会社と減る会社があるので、一度比べてみてください。

 

■ 「赤字なのに消費税」が起きる仕組み

同じ会社で、役員報酬を月25万円(年300万円)に上げたとします。粗利240万円から役員報酬300万円と社会保険料を払うと、営業利益は100万円近い赤字になります。それでも、消費税の納付額は24万円のままです。消費税の計算では、役員報酬も社会保険料も差し引けないので、法人税がゼロになる赤字の年でも、粗利がある限り消費税は発生します。

「赤字の年は税金がかからないと思っていた」という声をよく聞きますが、赤字でかからないのは法人税などの「利益にかかる税金」だけです。消費税と、法人住民税の均等割は、赤字でも払います。赤字の年ほど手元のお金が少ないので、納付の時期に慌てないよう、消費税の分を先に取り分けておくことが大切です。

 

■ やってはいけないこと

・預かった消費税を運転資金に回し、納付時期に資金が足りなくなる
・「税込の売上がそのまま自分のお金」と考えて値決めをする
・試算をせずに簡易課税を選び、2年間割高な納付を続ける
・消費税を払いたくないからと、売上の計上時期を遅らせる(申告漏れになります)

 

■ まとめ

・消費税の納付額は、おおむね「粗利×10%」で決まる
・役員報酬や社会保険料は、消費税の計算では差し引けない
・粗利が薄く人件費の割合が大きいほど、利益に対する消費税の割合が大きくなる
・赤字でも、粗利があれば消費税の納付は発生する
・免税事業者からの仕入は、2026年10月以降、控除が70%に下がっている
・粗利率が低い商売では、簡易課税や3割特例より一般課税が有利なことが多い
・粗利の10%を目安に、売上が入るたびに積み立てておく

 

売上を伸ばしているのに手元にお金が残らない、という感覚は、消費税の仕組みを知らないと「どこかで損をしている」ように見えます。実際には、消費税は最初から預かっているお金です。毎月切り分けて管理するだけで、納付の時期の慌て方は大きく変わります。

売上とお金の関係については、「売上はあるのにお金が残らない本当の理由」という記事もあわせてお読みください。

消費税の納付額は、毎月の試算表から見込みを出せます。「年に一度、申告のときに初めて金額を知る」状態をやめるだけで、資金繰りの見通しはずっと立てやすくなります。

粗利が薄い商売ほど、この10%の重みは大きくなります。

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自己紹介

竹澤 直樹

竹澤 直樹

運営者プロフィール

税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任

高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録

趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。

ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ

著書

「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)

運営会社

会社名
合同会社 ライズアビリティ
代表者名
代表社員 竹澤直樹
住所
埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
法人設立年月日
令和1年6月4日
資本金
100万円