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- 「オフィスを移したら、どこに何を出せばいいですか」——会社の住所を変えるときの届出の全部
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会社の住所を移したら、法務局での登記のあとに、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出が必要です。市区町村をまたぐ移転なら、地方税の届出は移転前と移転後の両方に出します。
先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。
「竹澤さん、オフィスを借りたので、会社の住所も自宅から移そうと思うんです。法務局以外にどこに何を出せばいいんでしょう。全部で何か所くらいありますか」
この社長は、会社を設立したときに自宅の住所で登記していました。仕事が増えて外にオフィスを借りたのを機に、本店もそちらに移すことにしたそうです。従業員はおらず、社長一人で社会保険に加入しています。
答えを先にお伝えすると、こうなります。
一人社長の会社なら、登記を含めて5〜7か所です。順番は「登記→税務署→都道府県・市区町村→年金事務所」。税務署は移転前の税務署に出せば足りますが、地方税は市区町村をまたぐと、移転前と移転後の両方に出す必要があります。
順を追って説明します。
■ まず、定款と登記
最初に確認するのは定款です。定款には本店の所在地が書かれていて、多くの会社は「埼玉県志木市」のように市区町村までにしています。この場合、同じ市の中での移転なら定款を変える必要はありません。別の市に移るときは、株主総会の特別決議で定款を変更します。
そのうえで、移転してから2週間以内に、法務局で本店移転の登記をします。登録免許税は、同じ法務局の管轄内なら3万円、管轄の外に移るなら旧・新それぞれに3万円で合計6万円です。登記を放っておくと過料の対象になることがあるので、期限は守ってください。
■ 税務署——出すのは「移転前」の税務署
登記が終わったら、税務署に次の2つを出します。
・異動届出書:移転後すみやかに
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書:移転から1か月以内(役員報酬を払っていれば必要)
「税務署は新しいほうに出すんじゃないんですか」と社長に聞かれましたが、提出先はどちらも移転前の税務署です。新しい税務署には、税務署同士で情報が引き継がれます。
インボイスの登録をしている会社は、異動届出書の「消費税」の欄にチェックを入れておけば、登録事項の変更届を別に出す必要はありません。公表サイトの住所も、これで変更されます。
■ 都道府県・市区町村——両方に出すのが基本
地方税(法人住民税・事業税)の届出は、税務署と違って役所同士の引き継ぎがありません。
・同じ市区町村の中での移転:都道府県税事務所と市区町村に1通ずつ
・市区町村をまたぐ移転:移転前と移転後の両方の市区町村に出す
・都道府県をまたぐ移転:都道府県税事務所も、移転前と移転後の両方に出す
移転後の役所には、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の写しと、定款の写しを添付するのが一般的です。様式や添付書類は自治体ごとに少しずつ違うので、各役所のホームページで確認してください。
数えてみると、同じ市の中での移転なら、法務局・税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所の5か所です。都道府県をまたぐと、都道府県税事務所と市区町村がそれぞれ移転前・移転後の2か所ずつになるので、7か所になります。
■ 年金事務所と、従業員がいる場合
社会保険に加入している会社は、年金事務所に「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を出します。期限は移転から5日以内と短いので、登記と並行して準備しておくと安心です。
従業員を雇っている会社は、さらに次の2つも必要です。
・労働基準監督署:労働保険名称、所在地等変更届(10日以内)
・ハローワーク:雇用保険事業主事業所各種変更届(10日以内)
こちらは、移転後の労働基準監督署・ハローワークに出します。税務署と提出先の考え方が逆なので、注意してください。
■ 役所以外で、忘れがちなところ
・銀行:口座の住所変更。登記事項証明書を求められることが多い
・許認可:業種によっては所管の役所への変更届が必要
・取引先:請求書の送付先、契約書の住所
・自社の請求書・名刺・ホームページの住所
特に請求書は、インボイスの記載事項にも関わります。移転日から新しい住所に切り替えてください。
■ 自宅から移したら、経費の入れ方も変わります
冒頭の社長のように自宅から本店を移した場合、届出とは別に、経費の入れ方も見直します。
自宅の家賃の一部を社宅や事務所家賃として会社の経費にしていたなら、移転した月からその処理をやめるか、使い方に合わせて割合を見直します。オフィスを移したのに自宅の家賃を同じように経費にし続けると、税務調査で説明がつきません。
一方、事業のためだけに借りたオフィスの家賃は、按分せずに全額を経費にできます。この違いはレンタルオフィスの家賃は全額経費になる——自宅作業との決定的な違いで詳しく書きました。
■ やってはいけないこと
一番避けたいのは、登記を移さないまま、名刺や請求書だけ新しい住所にしてしまうことです。登記上の本店と実際の所在地がずれていると、銀行での手続きや融資の審査で説明を求められます。税務署や役所からの郵便が、古い住所に届き続けることにもなります。
また、移転先が登記に使える物件かどうかは、契約前に確認してください。住所を借りるだけのサービスなどでは、登記や許認可に使えない場合があります。住所選びの考え方は、志木市で法人登記をする手順と、住所選びで失敗しないポイントで書きました。
■ まとめ
・順番は「定款の確認→登記→税務署→都道府県・市区町村→年金事務所」
・登記は移転から2週間以内。登録免許税は3万円(管轄外なら6万円)
・税務署には異動届出書と給与支払事務所等の届出書。どちらも移転前の税務署へ
・インボイスの変更は、異動届出書の消費税欄にチェックすれば足りる
・地方税は、市区町村や都道府県をまたぐなら移転前・移転後の両方に出す
・年金事務所は5日以内。従業員がいれば労基署・ハローワークにも(移転後の方へ)
・銀行、許認可、取引先、請求書の住所も忘れずに
・自宅から移したら、自宅家賃を経費にする処理も見直す
・登記を移さず、住所だけ使い始めるのは避ける
本店移転は、一つひとつの書類は難しくありません。ただ、提出先が5か所以上に分かれ、「移転前に出すもの」と「移転後に出すもの」が混ざっているので、順番を間違えると二度手間になります。
移転が決まったら、まず一覧をつくって、どこに何を出すかを書き出すところから始めてください。
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自己紹介
竹澤 直樹
運営者プロフィール
税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任
高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録
趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。
著書
「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)
運営会社
- 会社名
- 合同会社 ライズアビリティ
- 代表者名
- 代表社員 竹澤直樹
- 住所
- 埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
- 法人設立年月日
- 令和1年6月4日
- 資本金
- 100万円