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NEW決算前に利益が出すぎた。今からできることと、やってはいけないこと

決算まで1〜2ヶ月あれば、まだ打てる手はあります。ただし「お金を使って税金を減らす」という発想で動くと、たいてい損をします。

先日、顧問先の社長からこんな質問をいただきました。

「今期、思ったより利益が出そうなんです。決算まであと2ヶ月ですが、今からできることはありますか」

ありがたい相談です。そして、この時期に聞いていただけると打てる手があります。決算が終わってからでは、もう何もできません。

答えを先にお伝えすると、こうなります。

できることはあります。ただし基本は「もともと必要だったものを前倒しする」ことであって、税金を減らすために新しく支出を作ることではありません。

順を追って説明します。

 

■ まず、大前提の話

節税を考えるとき、必ず最初に確認していただきたい計算があります。

100万円の経費を使ったとき、減る税金はいくらか。

中小法人の実効税率は、所得800万円以下の部分でおおむね23%前後です。つまり、100万円使って減る税金は約23万円。

残りの77万円は、単純に出ていったままです。使わなければ、税金23万円を払ったうえで77万円が手元に残っていました。

ですから「税金を払いたくないから使う」は、ほとんどの場合で損になります。

意味があるのは、次の2つの場合だけです。

・どうせ来期に使う予定だったものを、今期に前倒しする
・支出したお金が、将来戻ってくる形になっている

この前提を置いたうえで、具体策に入ります。

 

■ 手その1:経営セーフティ共済の前納

中小企業倒産防止共済、通称セーフティ共済です。掛金が全額損金になります。

掛金は月5,000円から20万円まで。そして1年分を前納できます。決算月に1年分をまとめて払えば、最大240万円を一気に損金にできます。

しかも、この掛金は解約したときに戻ってきます。40ヶ月以上納めていれば、100%が返ってきます。支出ではなく、積立に近い性質を持っています。

ただし、注意点が3つあります。

1. 40ヶ月未満で解約すると元本割れします。12ヶ月未満なら全額戻りません。すぐに解約する前提では使えません。

2. 解約したときのお金は収益になります。戻ってきた年に利益が出ていると、そこで課税されます。退職金を出す年や、大きな赤字が出る年に合わせて解約する、といった出口の設計が必要です。「先送りしているだけ」という認識は持っておいてください。

3. 解約後2年間は、再加入しても掛金を損金にできません。令和6年度の税制改正で入った制限です。「一度解約して、また入り直す」という回し方はできなくなりました。

それから、すでに今期の分を年払いで納めている場合、追加で前納することはできません。この手を使うなら、期首の段階で計画しておく必要があります。

 

■ 手その2:年払いに切り替える(短期前払費用)

家賃、保険料、システムの利用料。毎月払っているものを年払いに切り替えると、1年分をまとめて今期の経費にできます。

これは短期前払費用という取扱いで、次の条件を満たす必要があります。

・支払った日から1年以内に、サービスの提供を受けるものであること
・実際に支払っていること
・毎期継続して同じ処理をすること

3つめが重要です。「今期だけ利益が出たから年払いにする」という使い方は認められません。来期以降も年払いを続ける前提で切り替えてください。

また、収益に直接対応する費用(仕入れなど)には使えません。

 

■ 手その3:30万円未満のものを買う

本来、10万円以上のものは資産に計上して、数年かけて減価償却します。買った年に全額を経費にできません。

ただし中小企業には特例があります。取得価額30万円未満のものは、年間300万円まで、買った年に全額経費にできます。

パソコン、什器、工具など。買い替えを検討していたものがあれば、このタイミングで進める価値があります。

条件は、事業年度末までに「取得して、実際に使い始めている」ことです。注文しただけ、届いただけで箱を開けていない、という状態では今期の経費になりません。決算間際に発注する場合は、納品と設置が間に合うかを確認してください。

 

■ 手その4:請求のタイミング

ここは慎重に扱う必要があります。

売上をいつ計上するかは、自由に決められません。原則として、商品を引き渡した時点、サービスの提供が完了した時点です。請求書をいつ出したかではありません。

ですから、今期に完了した仕事の請求書を来期に回す、という処理はできません。これは期ズレといって、税務調査で最も指摘されやすい項目のひとつです。

一方で、来月着手する予定の仕事を来月に着手するのは、当たり前のことです。仕事の順番を組み替える、納品を来期に設定する。これは事業上の判断であって、問題ありません。

境目は「もう終わっている仕事かどうか」です。ここを越えると、単なる先送りではなく仮装隠蔽と見られます。

 

■ やってはいけないこと

1. 完了した売上を翌期に回す
前述のとおりです。意図的にやったと判断されれば、重加算税の対象になります。

2. 実態のない外注費や領収書
論外です。相手先への反面調査で必ず露見します。

3. 使わないものを買う
在庫を大量に仕入れても、売れ残った分は経費になりません。棚卸資産として資産に残るだけです。「仕入れれば経費」という誤解は根強くありますが、経費になるのは売れた分だけです。

4. 「全額損金」の説明を鵜呑みにする
保険商品などで全額損金と説明されるものがあります。それ自体は事実でも、解約したときの返戻金は収益になります。トータルで見て有利かどうかは、解約する時期次第です。契約する前に、出口まで含めて試算してください。

5. 赤字になるまでやる
融資を受ける予定があるなら、これは避けてください。決算書は数年分見られます。税金を数十万円減らすために、資金調達の道を狭めるのは割に合いません。

 

■ 本当に効くのは、期首の判断

ここまで4つの手を挙げましたが、正直なところ、決算直前にできることは限られています。

効果が大きいものは、期首にしか決められません。

・役員報酬の金額(事業年度開始から3ヶ月以内)
・役員への賞与を出すための事前確定届出給与(届出に期限があります)
・共済の掛金設定

つまり、利益が出そうだと気づいた時点で、まず来期の設計に着手するほうが効きます。今期は打てる手を打ちつつ、同じことを来期に繰り返さない準備をする。この順番です。

 

■ まとめ

・100万円使って減る税金は約23万円。残りは出ていったまま
・基本は「もともと必要だったものを前倒しする」
・セーフティ共済は1年分前納で最大240万円を損金化できる
・ただし40ヶ月未満は元本割れ、解約時は収益、解約後2年は再加入しても損金不可
・年払いへの切替は、毎期継続することが条件
・30万円未満のものは年300万円まで即時経費。ただし期末までに使い始めること
・完了した売上を翌期に回すのは期ズレ。やってはいけない
・赤字にするまでやると、融資に響く
・効果が大きい手は期首にしか打てない

 

決算前の相談で一番多いのは、「もっと早く言ってくれれば」という結末です。9月決算の会社であれば今がまさに期限ですし、12月決算の個人事業主の方も、今から動けば選択肢があります。

利益が出そうだと気づいたら、その時点で試算してみてください。着地が見えれば、打つべき手も決まります。

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自己紹介

竹澤 直樹

竹澤 直樹

運営者プロフィール

税理士、コンサルタント
東京中央税理士法人 社員税理士(役員)WTA事業部長
合同会社ライズアビリティ 代表社員
フジ設計コンサルタント株式会社他、顧問先企業の取締役、監査役を歴任

高校卒業後に税理士を目指す。大原簿記専門学校卒業後、
田上会計事務所(現 東京中央税理士法人)で働きながら、
東亜大学大学院法学専攻(修士)を修了。
2015年税理士登録

趣味は、株式投資とゴルフ
土日は犬の散歩をしながら、リフレッシュしています。
猫もいますが、エサが欲しい時しか甘えてきません。

ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ

著書

「ひとつひとつていねいに会社の数字を学ぶ」
(かんき出版)

運営会社

会社名
合同会社 ライズアビリティ
代表者名
代表社員 竹澤直樹
住所
埼玉県志木市本町5-23-24 第3本吉ビル4階
法人設立年月日
令和1年6月4日
資本金
100万円